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備忘録としてのweblog

残り全部バケーションは面白かった|AXが好きな人は好きなんじゃないかな

伊坂幸太郎の小説、残り全部バケーションは連作短編でありながら、大きなストーリーを形成する。これは、もはやお家芸というか、それならば面白いに違いないというレベルで、ファンの信頼を勝ち得ている手法だ。

誰が主人公なのかは決めがたいのだが、メインキャラクターは裏稼業の2人の男である。この時点で伊坂ファンは面白さを確信する。

伊坂幸太郎の闇シリーズは面白いに決まっている。

特に、殺し屋シリーズは人気が高く、今のところのシリーズ最新作AXも期待を裏切らない仕上がりになっていた。

残り全部バケーションの満足度はかなり高い

残り全部バケーションは、タイトルの軽さというか、明るさ朗らかさに騙されて今まで読んでいなかったのだが、暗さと軽快さを併せ持つ傑作だった。

5つの独立した短編(正確な言い方ではないかもしれない、章立てと捉えた方が正しいかもしれない)が収められており、しかしそれぞれの結びつきは強く、全体として1つの作品になっている。それでいて、1つ1つが独立して面白いのだから、言うことがない。

納められた5つの作品は、それぞれ語り手の視点の異なる話になっている。特に誰が主人公とも決めがたいお話が5つ。不思議な浮遊感がある。だけど、きっちりと結びついたそれぞれのストーリーを全て読み終えたとき、それはもう相乗効果は凄まじく、満足感に包まれる。

残り全部バケーションは地味な印象が確かにあるのだが、隠れた名作というか、派手さはないもののよくまとまった秀作であると思う。

死神の精度や、魔王、重力ピエロなどに比べて、知名度は低いが、内容の良さは間違いない。

残り全部バケーションの中心には「小さな兵隊」という作品がある。順番的には4つ目、この作品があることで、全体の深みが増している。全体の中で、最も強く独立した話になっているのだが、作品の中心がここにあるといっても過言ではない。

また、1つ目のストーリと5つ目のストーリ(つまり最終章)が、しっかりとストーリーを形成・解決することで、連作短編集というよりは、長編小説と呼ぶべきまとまりがある。実際に長編小説だと思うのだが。

すごく売れた、とても有名な、他の伊坂作品に比べれば、読んでいない人は多いのではないだろうか。(私が知らないだけで、実はすごい人気のある作品だったらごめんなさい)

とにかく、とても面白かった。良い日曜日が過ごせました。ボリューム的に、2〜3時間で読みきれるので、休日の読書には持ってこいな作品だと思う。