【ギター作曲】パワーコードでできるのか?難しい理由と解決のヒント
パワーコードはギターを始めて最初に覚えるコードフォームの1つです。
押さえるのが簡単で、平行移動、もしくは上下移動するだけでコードチェンジが可能です。
パワーコードだけで作曲がでできればギターを始めたばかりでもオリジナル曲がつくれてしまいます。
ただ、パワーコードでの作曲はある意味で難しくもあります。
3度の音
メジャーとマイナー
スケールとコード進行
この3つを軸に、パワーコード作曲が難しい原因と解決のヒントを提示できればと思います。
(パワーコードを主軸にして説明しているため、逆に複雑で、正統な順番での説明になっていませんが、理論をつまみ食いしながら少しずつ身につけたい人には役立つかもしれません)
パワーコードでは3度が省略されるためキーやコード感が判然としない
パワーコードでの作曲が難しいのは、キー(調性)やコード(メジャーorマイナー)感が曖昧になるからです。
通常のコードは1度と3度と5度の3和音を基礎としています。パワーコードでは、このうち1度と5度しか鳴らしません。
パワーコードは3度が省略されていることで、シンプルでスッキリとした響きになり、アレンジの手法としても多用されています。
しかし、それがパワーコードで作曲するさいの難しさに繋がります。
作曲のさいには、3度の音を意識する必要があります。
3度の音がメジャーとマイナーを分ける
メジャーコードやマイナーコードの違いは3度の音にあります。
コード先行で作曲をするさいは、この3度の音が重要になります。曲の雰囲気を決定するのは基本的に3度の音だからです。
パワーコードが1つだけ鳴ってもメジャーコードなのかマイナーコードなのかは分かりません。
作曲のさいは実際に鳴らす1つ目のパワーコードに対して、自分の頭の中で定義する必要があります。
出来た曲に対してパワーコードを当てることは簡単ですが、反対は難しいのです。
「今鳴らしているこのパワーコードはメジャーなのか、マイナーなのか」まずはそれを自分で決めると作曲に方向性が出てきます。
決めるためには、実際に3度の音を鳴らせばいいわけですが、パワーコードを進行させるだけでも決めることもできます。
2つのパワーコードで3度を感じさせる方法
3度の音を鳴らさずに、パワーコードにマイナー感、また曲がマイナーキーであることを表現することができます。
パワーコード単体では、メジャーやマイナーを感じさせることができませんが、パワーコードが2つあればメジャーかマイナーかを感じられます。
1つ目のパワーコードを鳴らしたあとに、3フレット高い位置(ボディ方向に)で2つ目のパワーコードを鳴らしてください。
するとマイナーの『感じ』がします。
これは、2つ目のパワーコードのルート音(人差し指で押さえている音)が、1つ目のパワーコードのルート音に対して短3度の関係にあるからです。
つまりマイナーコードの3度の音です。
パワーコードが2つあれば曲のキー(メジャーかマイナーか)を決定することができます。
パワーコードを用いる曲では圧倒的にメジャーキーの曲が多いわけですから、マイナーなだけで新鮮な感じがします。
作曲をするときには、本人が新鮮さを感じられることが大事なので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
(メジャーキーをパワーコードで作曲したい場合は、2つ目のパワーコードを4フレット高い位置で鳴らしてください)
音階(スケール)とパワーコードの進行
パワーコードでコード進行するさいに、知っておくといいのが音階(スケール)です。
特にメジャースケールを意識するだけでも、パワーコードでの作曲に役立ちます。
メジャースケールはいわゆるドレミファソラシドです。
メジャースケールを土台としてコードは成立しています。(ダイアトニックコードと呼びます)
パワーコードの進行もメジャースケールに沿って行えばキーが確定しますし、それは作曲のしやすさにも影響します。
メジャーキー4度の音と7度の音
3度の音を意識して、1つ目のコードがメジャーかマイナーかを決めることができる、ということは分かりました。
次は、その1つ目のコードがコード進行の中でどのように機能する和音なのかを決めます。
1つのキーにメジャーコードは3つあります。
パワーコードで押さえるときに、鳴っていない3度の音を自分で定義したとしても3つあるメジャーコードのうちどのコードなのかということはハッキリしません。
これを明確に定義するためにメジャースケールの4度の音と7度の音が重要になります。
ドレミファソラシドの「ド」をルートにしたメジャーコードをトニックと呼びます。コードネームでいうとCです。
「ファ」をルートにしたメジャーコードはサブドミナントです。コードネームはFです。
「ソ」をルートにしたメジャーコードはドミナントです。コードネームはGです。
パワーコードで鳴らすとき、この3つのメジャーコードのうちどのコードを鳴らしているかを自分で決めましょう。
どう決めるかというと、4度の音と7度の音を意識することで決めます。
サブドミナント(ここではF)と、トニック(C)の違いは4度です。4度が半音高いです。
ドミナント(ここではG)と、トニック(C)の違いは7度です。7度が半音低いです。
この違いをパワーコードで表現するには進行が必要です。
マイナーキーなら6度と2度
マイナーキーでも同じようなことができます。(少し複雑になりますが)
マイナースケールには3つのマイナースケールがありますが、ここでは1つのマイナースケールで考えます。
ナチュラルマイナースケールです。
ナチュラルマイナースケールは、メジャースケールから導き出すことができます。
メジャースケールの6度の音(6番目の音)、ドレミファソラシドでいうと「ラ」の音です。
ドレミファソラシドを「ラ」の音から始める
ラシドレミファソラ
がナチュラルマイナースケールです。
ナチュラルマイナースケールには、4つのマイナーコードが存在します。
しかし、1つのコードは5度が半音低いためパワーコードでも単一で表現することができます。
ということで、マイナーコードにもパワーコードで鳴らすと判別できない3つのコードがあることになります。
メジャーのときと同じく、トニック・サブドミナント・ドミナントです。
トニックは「ラ」をルートとする和音、「Am」です。
サブドミナントは「Dm」。Amとの違いは6度です。6度が半音高い。
ドミナントは「Em」(Emをドミナントと呼ぶのは正確ではありませんが、その詳細を理解するにはハーモニックマイナーというスケールを理解する必要があります)です。Amとの違いは2度です。2度が半音低い。
(マイナーコードの関係性は複雑です。これならパワーコードで作曲しない方が簡単かもしれません)
1つ目のパワーコードから全音上昇したときには、全てが明らかになります。
さらに、
ダイアトニックコードが理解できていればパワーコードでも作曲できる
ここまでパワーコードで作曲することを前提に説明を続けてきたので、余計に複雑になっています。
ダイアトニックコードというコード理論の基礎を理解して、3和音で鳴らせば、自然と導き出せることです。
ただ、ギターを通じてコード理論を習得するさいには、色々な角度から考えてみることも有効です。
ギターは理論を知らなくても、演奏や作曲ができるように作られています。いくつかのコードフォームを覚えれば多くの曲が弾けますし、作曲もなんとなくできてしまいます。
そうしたギターの特性を活かしながら、実際の演奏技術・作曲・コード理論などをそれぞれ向いたやり方で習得していけばいいのではないでしょうか。
パワーコードではなくルートと3度でも良い
ここまで、鳴らない3度の音に関して重点的に説明してきましたが、ルートと3度だけを鳴らして作曲するという方法もあります。
使う指はパワーコードと同じく2本ですから、押さえることも簡単です。
ルートは今まで通りに人差し指で押弦して、中指で3度を押さえてください。
Fのコードフォームで薬指と小指を外した形になります。中指ではなく薬指で押さえてもいいです。
Fのコードを押さえたときの中指の位置が3度の音になります。
これはルートを6弦・5弦で押さえる限り、どこで押さえても同じ関係性になります。
そして、6弦をルートにしたときは3度はメジャーになります。
5弦をルートにすれば3度はマイナーになります。
実際の演奏でこのような押さえ方をする必要はなく、作曲時限定の押さえ方としておすすめです。(ルートと3度だけを押さえる弾き方も曲も存在します)
作曲のさいは、何度も同じコードを同じように押さえることが多くなるため指や手が痛くなりがちです。
特にギター演奏に慣れていないと余計な力が入りやすいのでなおさらです。
作曲以外の部分を楽にすることも、作曲には大切なことです。
1コード・2コードでの作曲
1コードや2コードで作られた雰囲気のある曲は魅力的です。
「モード」という考え方を取り入れるとそのような曲も作れます。
そのさいにも、パワーコードで作曲するためのコード理論やスケールの知識・把握が役に立ちます。
ダイアトニックコードや基本のスケールを徹底的に読み解くと、モード的な自由な作曲に繋がることになります。
反対に複雑なコード理論を突き詰めても、理解が不十分であれば、作曲に関しては不自由になります。
そこには構造と定型しかないからです。
3コードではメロディが明確になりにくい
3コードというものがあります。トニックとサブドミナントとドミナントを用いるシンプルなコード進行です。
パワーコードと合わせて頻繁に登場します。
パワーコードだけでも3コードによる一連の流れがあれば、音楽に必要な最低限の動きは生まれます。
ですが、それで作曲をすることは難しいです。
音楽の構造の基礎だけがあっても、逆に選択肢が広すぎて収集がつきません。
(ブルースの素養なども求められます)
それでも自由にメロディを生むことができるならば良いと思いますが、そうでない場合は極力自由より制限を愛した方がいい結果を生みやすいはずです。
コード先行、あるいはリズム先行など、メロディ以外の部分から作曲をするということは、メロディ以外の要素を決定することで、メロディに制限をかけることに近いのです。
コード理論を無視すればパワーコードで作曲できるが
初歩的な範囲で説明してきました。
あくまで、基本的なコード理論の枠組みの中での考え方です。
理論を押し進めてもっと複雑に考えれば、他にもさまざまな解釈が成立します。
またコード理論を理解するほど、その是非、またコード進行とメロディの関係性は曖昧に感じるようになります。
理論を知らずに自由な発想・感性に頼るのも良いでしょう。
ただ、それを十分にコントロールして自分の作曲に活かすことは難しいです。
パワーコードしか弾けなくても、作曲はできるし、理論的に外れない曲も作れるわけです。
ギターの演奏よりも、作曲に関心のある人のヒント・ガイドになれば幸いです。
基本のコードフォームを覚えて、基礎的なコード理論を覚えた方が早い気もしますが、それに向いていない人もいますから、1つの考え方として参考にしてみてください。
作曲を続けるうちに、ギター演奏の技術も上がるでしょう。
ギター演奏の技術が上がれば、指板上の音の関係やコード理論についての理解も深まるはずです。
まずは、転調のないダイアトニックコードだけで作られた曲を探して聞きいてみることもおすすめです。そこには十分な可能性があります。