衝動買いを抑えるには、色彩の魔力を理解すること|あなた返品できる人ですか
ユニクロや無印良品など、割と安価で、なおかつ品揃え豊富な店舗には、抗いがたい魔力がある。
それは、おそらく色彩の魔力だと、私はあたりをつけているのだが、同じように感じておられる人も、多数いるのではないか。
分かりやすくユニクロで考えてみる。
Tシャツやネルシャツにパーカーやニットなどは、色のバリエーションが多い。この色どりの豊かさにあてられ、我々の購買意欲は高まる。
「なんて素敵な色とりどり。まるで宝箱。明るい未来はここにあったのね」となる。
こうなってしまっては、もう相手の思うツボで、同じ商品を色違いで購入せしめようなどと沸きたってしまう。他のセレクトショップなどで、1着買う値段に比べて、はるかに安い。だから2枚、3枚と欲を出す。
そして、実際に買ってしまう。「いい買い物ができたね、お父さん。たくさん買えたよ」
当たり前なのだ。安いからユニクロに来たのだ。本当に欲しいモノを我慢して、ユニクロに来ているのだ。だから、2枚買える。3枚買えることもある。もっと買えることもある。Tシャツなら、色違いで10枚買ったて1万円。
「だけどね!それならね!初めから欲しいもの買った方が良かったんじゃない?そうだったんじゃない?」
って、経験はほとんどの人がお持ちのはず。
あえて、気づかないフリをしている人もいるだろうし、まだ気づいていない人もいる。
悲しい。悲しい性である。これは、やはり、あれ。色彩の魔力。
色どりの豊かさは持って帰れない
カラフルな店内。豊かな色調。湧き上がるインスピレーション。そのイメージごと持って帰ることができればいいが、我々が持って帰れるのは、その中の1色のみである。
仮に2枚・3枚買えば2色・3色になるが、それでは不十分。あのカラフルに陳列された商品棚に比べれば、その差は歴然。
ならばと、5色とか10色とか、買ってもいいけど、それなら最初から欲しいもの買いに行こうよ、お父さん。
この事実にどこで気づくかが重要だ。カラフルな商品棚を見て、テンションを上げるのはしょうがない。だが、どこかで正気に戻らなければならない。色きちがいになっている場合ではないのだ。
商品棚から、レジに向かうまでには気づきたい。そうすれば代金を支払わずに考え直せる。だが、家に帰って、鏡の前でルンルンしながら、当て当てしながら、ファンファンするまで気づかなかったらどうなるだろう。
返品できる人ですか?
返品するしかない。
「なんか、鏡の前でファンファンしてるときに気づいたんですが、陳列技術が織りなす色彩の魔力に惑わされていたようで、冷静な判断ができてませんでした。あのとき私は心身喪失状態でした。だから、あの決済はなかったことにしていただけますか。ええ。そうです。ファンファンしてるときに気づきました。誠に申し訳ありません」
このような言い訳を並べて、陳謝せねばならない。
実際には、店員さんは優しいだろうし、尋問などしてこない。だから、神経が図太い人なら気にせずに、己の間違いをなかったことにできるだろう。
だが、そうでない人も一定数いる。自分を恥じ、返品に行けず、自らの可能性さえ否定してしまう。
「陳列棚にいるときは、とても輝いて見えたのに。私のもとに来た途端、輝きを失いました。やはり、グループの魔力は偉大です。この子はソロの器ではなかったし、ましてやこの子をプロデュースするなんて私には荷が重い。いえ、この子の輝きを奪ったのは私かもしれない。被害者ぶってんじゃねーよって、あなた思ってる?そうね。全ての責任は私にあるのかもしれない」
こうなってしまっては、返品どころではなく、彼女の先行きさえ覚束ない。心配である。
いい人ほど損をする
世の中というのは、いい人ほど損をするらしい。そして、普段慎ましく生きている天使のような人ほど、綺麗なものに弱い。
ましてや、ユニクロの企業努力によって、彼女の手には、かつて与えられたことのない裁量権があったのだ。
彼女が狂ってしまうのも仕方ない。
やはり、魔力というものには気をつけないといけない。分かりやすい罠ばかりではない。日常のあちらこちらに魔の門はある。その魔力に取り込まれないようにしたいものだ。
(なんの、話でしたっけ)